● 心の一冊を
「辞めたい」そう思ったときに読み返したくなる「心の一冊」を持ちましょう。
看護師さんは作家の才能もある方が多く、自身の体験談や若い看護師さんたちの悩みの助けになるようにと書かれた本がたくさんあります。ネットで「悩み相談」等を検索すると数多くの看護師さんの悩みと出会います。けれども生々しくてつらさは共感できますが、もう一度「自分を鼓舞させてくれる」力はくれません。
ぜひ先輩看護師さんの経験の結晶である本を読んでみてください。深みのある一言に涙が出ます。泣くことができれば、もう一歩踏み出すことができます。
今回であった本を数冊ご紹介します。
★『看護師を辞めたくなったときに読む本』
Smart Nurse Books 編集室:編 MCメディカ出版:出版
「辞めたい」と感じた時に読んでほしい一冊です。この本は25人の看護師部長自身が「辞めたい」を克服してきた経験がぎっしり詰まった本です。看護師という仕事は本当に素晴らしくそして命を預かる重い仕事であります。守秘義務がありますのでおそらくここにかかれているのはごく一部のことです。けれども看護経験のある方ならば、その現場や当時の看護師部長の気持ち、そしてやりきれなさが手に取るようにわかるはずです。
長い看護師人生を乗り切ってきたからこそ、ずしんとくる言葉、珠玉のエールが書かれてあります。「もう一度やってみよう」と前向きにさせる力があります。
★『看護師専用 お悩み外来』
宮子あずさ:著 医学書院:出版
あずささんは「悩めることも看護師にとって必要な才能」といいます。
この本は雑誌に掲載されていた「看護師お悩み相談」に実際に回答してきたことを再編したものです。看護師のぶつかる壁、悩みの種ごとに丁寧な心温まる回答があります。
「悩みには解決策が見いだせないこともある。けれど、悩みの本質、自分がなぜそのことを悩んでいるのかに気づくだけでも安心できる」といいます。悩むことに価値があり、ぜひ深く見つめて看護師という自分自身を発見してほしいと呼びかけています。
「悩むことも才能」時には泣いたっていい。完全な正解はなく、求めすぎるからつらくなり。時にはケッと心で思って顔は笑顔でもいい。悩みは看護のとも。いっしょになやんでいきましょう。
このような懐の深いメッセージにいつしか心が温かくなります。宮子先生も「患者さんの自己決定を尊重するのか、看護師として自分が適切と思う治療法に誘導するのか。答えは今だに出ず深まるばかり・・・」このような深いテーマにも触れています。
宮子先生の心のしなやかさや深さに癒されますので、ぜひ一度目を通してほしいと思います。
★ 『看護の力』
川嶋 みどり:著 岩波新書:出版
人が生まれながらに持っている自然治癒力を引き出す助けをすること。これが看護師の原点といいます。
胃がんの手術の後、ガスが出ず、体位も変えられず、痛みに苦しんでいた患者さんに熱いタオルで清拭をしたところ、「おなかがぐるぐるっとなった」といいます。日々の看護の実践の中から得た珠玉の看護力が数多くかかれています。
患者さんが人らしく普通の暮らしが出来るよう看護師としてできることを深く追求し、「看護師としての理念」を丁寧に説明してくれます。必死に生きる患者さんの姿や生きざまにはっとさせられ、看護師の仕事のすばらしさを改めてふかくかんじることができます。
「自分はこのままでいいのだろうか」。漠然と自分の生きる道を見失ったとき、読んでほしい一冊です。
このほかにも川嶋みどりさんは、数多くの本を出されています。どの本も素晴らしい本です。
★ 『ナースの働きかたハッピーガイド』
スマートナース200人なんでも向上委員会:編 MCメディカ出版:出版
現代の看護師の経済事情から「ワークライフバランス」チェック、それに基づいた分析等、自分のライフプランを振り返る良いチャンスになる本です。
「育児のためにどのぐらい貯金があればよいのか」「ライフプランシートを作成し、将来の出費にそなえよう」など、看護師の実生活に役立つ情報がもりこまれています。
★『ナース裏物語』
中野有紀子:著 文春文庫:出版
新人看護師さんに一度読んでほしい本です。理想と現実のギャップをちょっとだけ埋めてくれるかもしれません。とんでもナースにナース隠語、プリセプターになってみて、委員会も看護師の仕事など、「白衣の天使」といわれ守秘義務のヴェールに隠れた看護師の現場をちょっと垣間見ることができます。
ちょっと毒もありますので、気を付けて読んでくださいね。ベテラン看護師さんにとっては「あー、こういうのもあったあった」と思わず笑いを誘うエピソードもあるかも知れません。医学に非常に知識がある患者の家族との余計なトラブルを防ぐために床ずれのケア一つでも承諾書を作成する必要があるなど、はっとされるエピソードも書かれてあります。
● 書くことで癒される
看護師さんは「守秘義務」が課されているためになかなか看護の厳しさやつらさ、悩みについてもっと具体的に残したいと思っても、プライバシーにかかわるだけでなくデリケートなことなので、「ずばり」書くことができません。そのため「口伝」としてベテラン看護師から新人看護師へ「こんなこともあるのよ…」と語り継がれているのでしょう。
時間がないと思いますが、ぜひ日々の気づきを日記に一言でもいいので書いてほしいと思います。「話せない」ことは次第にたまっていきます。「やるせない思い」をした一日もあるでしょう。また、素晴らしい患者さんの生きる姿に合うこともあるでしょう。そういった日々の思いを書くことで、吐き出してください。
そして、時間がたった時、あなたが歩んできた「看護の道」がくっきりと見えてくるはずです。中にはもう見たくないエピソードもあるかも知れません。けれど「辞めたい」と強く思ったとき、「自分を見失ったときのために」ぜひ、「あなただけの看護の道を」文にしていってください。